これから陳情令見る人向け解説

 中国の実写ドラマ『陳情令』を最近全話視聴しました。この作品の面白さについては既に各所で語られているのでここでは割愛し、「陳情令気になるけど全然知らないな」という人向けに「初見で知っていると便利なこと(ネタバレなし)」を書いていこうと思います。

 

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陳情令とは何か

 中国のBL小説『魔道祖師』を実写ドラマ化したファンタジー時代劇です。検閲の関係で直接的な描写はないようです。

 ドラマは1話約45分×50話で長さとしては大河みたいなものです。WOWOWで再放送されている他、各種配信サービスでレンタル可となっています。私はFODで字幕版16話までのレンタルパックを購入し、10話あたりまで見た段階で尋常でない出来の良さを察しBD-BOXを全巻購入しました。

 本編は中国語音声+日本語字幕です。部分的な日本語吹き替え版がBD-BOXの特典ディスクに収録されているのでこれから観る予定ですが、特に初見では文字情報がないと何が何やら分からなかったと思うので字幕で良かったなと思っています。

 ちなみに今回初めて知ったのですが中国のドラマでは諸々の事情で役者さん本人の声ではなく吹き替え音声が一般的だそうです。聞きやすいのでこれはこれでいいですね。

 

mdzs.jp 

この記事を書いた経緯

 基本的に情報のアンテナの精度が鈍くとろいので「魔道祖師(陳情令の原作小説)やそのメディアミックス作品が流行っているらしい」と知ったのが2020年春頃、とりあえず実写ドラマから観るかと視聴開始したのが2020年11月3日です。ちなみに視聴完了したのは同月13日、平日も含めて1日平均4~5話のペースで視聴していた計算になるのでのめりこみ方が伝わるかと思います。

 なかなか手が出せなかった一因には原作どころか中国語コンテンツ自体未知の領域だったことがあり、しかも見るからに登場人物が多く呼称が何通りもあるため完全に恐れをなしていました。

 視聴を始めてみると意外となんとかなったのですが特に序盤ではしょっちゅう視聴済フォロワーに「あれ何??」と質問しては教えてもらっていました。そこで完走済みの今、(フォロワーへの感謝も込めて)数週間前の自分のような完全初見の人向けの内容をまとめておこうかと思い立ちました。

 詳しい方の解説が山ほどあるだろう中で正直蛇足感が半端ないですが、何かのお役に立つことがあれば幸いです。

 

 

前提

 陳情令初見がうろたえる要因(私調べ)は「①人数の多さ」「②呼称がやたらある」「③16年前の過去編と現在編がありその間にキャラの立ち位置が変わっている」ほぼこの3つです。

 特に③についてですが、このドラマは「16年前に死亡した主人公が蘇った現在編(1~2話)→主人公がなぜ死んだかを描く過去編(2話終盤~33話序盤)→現在編(33~50話)」という流れになっています。

 1~2話では見知らぬ固有名詞が怒涛のように登場しやや混乱しますが、16年前の回想が始まり話が進むうちに「あっこの人はあの…」「あっこんなこと言ってるけど後に…」的な感情が次々に発生し非常に面白いです。

 とはいえとっかかりがあった方が分かりやすいので、以下核心のネタバレを避けつつストーリー概要や主要登場人物を紹介していきます。なお私は現時点で実写ドラマ+ラジオドラマ1期前半を1周したのみなので、間違い等あればご指摘頂けると嬉しいです。

 

ストーリー概要・世界観(五大世家)

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 公式サイトに掲載されているあらすじは以下のようになっています。

 

 五大世家(藍氏、江氏、聶氏、温氏、金氏)が世の秩序を治める中、快活で何ものにも縛られない自由奔放な魏無羨(ウェイ・ウーシェン)が無口で戒律を重んじ己にも厳しい藍忘機(ラン・ワンジー)に出会う。そんな対照的な二人は、偶然にも藍氏の禁地へ足を踏み入れ、藍氏が代々守ってきた秘密を知る。正義のため力を尽くすことを誓った二人は、共に事件を解決していくうちに、徐々に絆を強めていくが、魏無羨は罪を被せられ、断崖から身を投げそのまま消息を断ってしまうのだった。その16年後、呪術によって再び蘇る魏無羨は藍忘機と再会した。二人は新たな事件の真相にたどりつくと、それが16年前の忌まわしい過去につながることに気づく…。

 

 まずこの物語は古代中国が舞台で、妖怪や鬼のような怪異が普通にそのへんをうろついており、人々を襲っている設定です。これを討伐する役を担っているのが「仙師」と呼ばれる霊力を持った集団です。彼らは基本的に仙門という派閥に属し、各々修行を行っています。主人公である魏無羨や藍忘機を始め、登場人物の大半がこの仙門に属する仙師です。

 怪異が出没した現場に赴き討伐することを「夜狩(よかり。昼間でもやる)」といい、他の世家とかち合った場合罠は迷惑にならない範囲で等の暗黙の了解があります。

 

 武器は剣です。人により+αを使用したりしますが基本的に剣を持ち歩くのが常識で、佩剣なしで正式な場に出るのは無礼にあたるらしいです。これらの得物は自らの霊力によって操るため霊力を封じれば武装解除状態となります。戦闘時は当たり前のように剣が空中をすっ飛んでいき琴の衝撃波で全体攻撃が発生し剣に乗って上空を移動します。

 仙門のうちでも上位にあたる五家が上記あらすじにもある「五大世家」で、それぞれの縄張りを治めています。各家のトップは「宗主」と呼ばれ、世襲制となっています。

 

◆ 五大世家 ◆
  • 「雲夢(うんむ)江(ジャン)氏」
  • 「姑蘇(こそ)藍(ラン)氏」
  • 「蘭陵(らんりょう)金(ジン)氏」
  • 「清河(せいが)聶(ニエ)氏」
  • 「岐山(きざん)温(ウェン)氏」 

 

 これらの呼称は「●●×氏」=「●●(場所)を領地とする×(苗字)一族」的な意味です。例えば姑蘇のあたりは藍氏の一族が治めており、前宗主の息子である藍曦臣(ラン・シーチェン)が宗主として一門を率いています。

 なお、16年前の過去編開始時点では五大世家ですが、1話時点(現在編)では温氏が欠けた四大世家となっています。

 各世家によって特色があり、まずどこの世家に属するかというところから登場人物を見分けると話が早いです。

 

雲夢江氏

 本拠地:蓮花塢(れんかう)

 見分け方:主に紫っぽい衣装、主人公一行が所属、蓮

 宗主:江楓眠

 所属:魏無羨・江澄・江厭離・虞紫鳶

 主人公・魏無羨はこの江氏の宗主・江楓眠の養子です。宗主の子である江澄や江厭離とは兄弟同然に育ち、過去編ではよく一緒に行動しています。

 江氏の住む蓮花塢は一帯の湖に蓮の花が咲いている美しい場所です。「為せば成る(うろ覚え)」みたいなモットーがあり、家風もなんとなく正攻法の主人公属性です。この手の派閥にありがちなこととして「政治が苦手」がありますがご多分に洩れず江氏もそんな印象です。

 

姑蘇藍氏

 本拠地:雲深不知処(うんしんふちしょ)

 見分け方:白~水色の衣装、抹額、家規、座学   

 宗主:藍曦臣

 所属:藍忘機・藍啓仁・藍思追・藍景儀・蘇渉

 藍氏は額に抹額(まっこう)という細めの鉢巻を巻いているので分かりやすいです。もう一人の主人公である藍忘機はここの宗主の弟です。

 拠点の雲深不知処は浮世離れした雰囲気の山奥ですが、藍氏の座学(講義)は評判が良いため各世家の子弟が大勢訪れ住み込みで学んでいます。16年前の過去編はこの藍氏の座学に魏無羨が義姉弟と共に向かうところから始まります。

 規律を重んじる厳格な家柄で、飲酒や夜間の出入り等諸々を禁じた三千条の家規があります。

 藍忘機の必殺技は琴を使った弦殺術(衝撃波を飛ばす)ですが、これは唯一の女性宗主・藍翼(ラン・イー)が編み出し、藍氏に代々伝わる戦闘法のようです。

 

蘭陵(らんりょう)金(ジン)氏

 本拠地:金麟台(きんりんだい)

 見分け方:金色の衣装、額の赤点、金持ち、隠し子

 宗主:金光善

 所属:金子軒・金子勳・金凌・綿綿・孟瑶※・莫玄羽※

 裕福で何かと派手な一門です。宗主・金光善にはそこらじゅうで隠し子を作っておきながら認知をしないという悪癖があり、作中で「日陰者の婚外子」が登場したら父親は常にこの人です。※の孟瑶、莫玄羽がそれにあたります。金氏直系の男子である金子軒や金子勳には額に赤い点がありますが、認知されていない隠し子にはありません。

 金光瑶、莫玄羽についてはややこしいので後述します。

 金宗主の嫡男・金子軒と江宗主の娘・江厭離は過去編開始時点で既に婚約しています。

 

清河(せいが)聶(ニエ)氏

 本拠地:不浄世(ふじょうせ)

 見分け方:緑~灰色の衣装             

 宗主:聶明玦

 所属:聶懐桑・孟瑶※

 聶氏は硬派かつ武闘派な雰囲気です。先祖が肉売りを生業としていたため、他家とは違い剣ではなく刀を使う一門です。代々の宗主の刀には怨念が宿るとされ、先祖の刀を祀って鎮めるための祠が領内にあります。

 ※聶懐桑の従者のような立場で過去編に登場する孟瑶ですが、彼は前述の通り金宗主の隠し子です。父親に認知されず金麟台を追い出されたため、この時点では清河聶氏に仕えています。

 

岐山(きざん)温(ウェン)氏

 本拠地:不夜天(ふやてん)

 見分け方:赤と黒の衣装、分かりやすい悪人ムーブ  

 宗主:温若寒

 所属:温旭・温晁・温情・温寧・温逐流・王霊嬌

 16年前の時点で最も勢力が強く、野心に溢れ傲慢で他家の迷惑を顧みない、と非常に分かりやすい悪役の挙動をしています。拠点は火山でどう見ても悪の秘密基地風の内装です。

 とはいえ積極的に暴虐の限りを尽くしているのはあくまで温氏本家であり、傍流の温氏はむしろ彼らに逆らえず嫌々従わされている立場です。座学に参加し魏無羨たちと交流する温情・温寧の姉弟もそんな分家の出身です。

 

 上記の宗主は16年前の時点の人です。お察しの通り衣装の色で属しているチームが分かります。ただし主要キャラが一通り初登場する藍氏の座学ではどいつもこいつも藍氏の制服である白装束なのでやや注意が必要です。

 

 

魏無羨の死と復活(1話)

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 仙師たちに恐れられ忌み嫌われた「夷陵老祖」魏無羨(ウェイ・ウーシェン)が争いの中で崖から身を投げる場面から物語が始まります。魏無羨は五大世家の一つ「江家」の弟子でありながら鬼道※に手を染め大罪を犯したとして死後も糾弾されることになります。

※主にネクロマンサー的な手段。死者を鎮めるのではなく呼び起こして使役する。心身に負荷がかかり暴走の危険もあるため禁忌扱いのようです。一方で魏無羨がかつて発明した「怪異をおびき出す旗」「周辺の怪異を察知するレーダー」等のアイテムは今も便利に使われていたりします。

 

 時は流れ16年後、莫という家で虐げられている莫玄羽(モー・シュエンユー)という若者がいました。彼は五大世家・金宗主の婚外子であり、金氏の元で弟子として修行を積んでいましたが結局追い出された経緯がありました。

 親戚の莫家に戻ったものの気の触れた厄介者扱いで日々虐待を受け、ついに耐えきれず復讐を決意します。その方法は「舎身呪」という術で、自分の魂・肉体と引き換えに死者を召喚し願いを叶えてもらう、というものです。

 莫玄羽が復讐のために蘇らせたのは悪名高い夷陵老祖の魂で、こうして魏無羨は莫家の一室にて莫玄羽として目覚めることになりました。

 

 復活した魏無羨の腕には4つの傷があり、これは4人への復讐ノルマを表しています。

 外見は生前の魏無羨のものだったのですが、莫玄羽は13歳から金氏の本拠地・金麟台で過ごしており、追い出されて莫家に住むようになってからは仮面や化粧で顔を隠していたため、莫家の人々からは問題なく莫玄羽として認識されます。しかし当然ながらかつての魏無羨の姿形を知る者に顔を見られれば正体がバレるわけです。

 

 たまたまこの日、莫家は最近悩まされている怪事件を解決してもらうため五大世家の一つ「藍氏」を招いていました。生前交流があり、魏無羨にとっては浅からぬ縁のある人物が属する一派です。幸いやってきたのはまだ年若い弟子たちで、16年前に死んだ魏無羨を直接知る者はいない様子でした。

 念の為仮面を被り、莫玄羽を装って藍氏の弟子たちによる化け物退治を見守ることにした魏無羨ですが、思いがけず強力な悪霊が出現し…というのが1話の内容です。

 

tv.rakuten.co.jp

 1話は無料で観られます。

1話登場人物

魏無羨(ウェイ・ウーシェン)

魏嬰(ウェイ・イン)、夷陵老祖(いりょうろうそ)

 主人公。原作では受けです。五大世家の一つ「江氏」の養子にして一番弟子であり、若くして才能を発揮していました。とある経緯で仙師としての正道を外れ鬼道の創始者となり、最後には仙門百家を敵に回して討伐された「夷陵老祖」(二つ名)として死後も悪名を轟かせています。

 生前様々な魔道具を生み出しましたが、特筆すべきは「陰虎符(いんこふ)」と呼ばれる傀儡(要するにゾンビ)を操ることができる宝具です。冒頭で仙家たちが奪い合っていたのがこれです。

 莫玄羽の術により死の眠りから目覚め、かつての知己との再会や行く先々で起こる怪異の解明を通して、破滅の原因となった16年前の事件の真実に迫ることになります。

 

莫玄羽(モー・シュエンユー)

 金氏の前宗主・金光善(ジン・グアンシャン)の隠し子です。息子として認知はされなかったものの、13歳から金氏の弟子の一人として本拠地の金麟台にて修行を行っていました。しかし素行不良を理由に破門され、母方の親戚である莫家に追い返されてしまいます。自分を苦しめた4人の人間への復讐を果たすため、莫玄羽は自らの命を代償に魏無羨を復活させます。

 蘇った魏無羨の腕に刻まれた4つの傷は復讐を一つ果たすごとに消えていきます。1話終了時点で傷4つのうち3つまでが消え、結果的に復讐対象は死んだ莫家の3人とあと不明の1人、ということが分かります(この運要素強いシステムどうかと思う)。最後の一人に思いを巡らせながら、魏無羨は莫家を出て旅立ちます。

 

藍思追(ラン・スージュイ)、藍景儀(ラン・ジンイー)

 怪異討伐の依頼を受けて莫家にやってきた藍氏の弟子である少年たちです。温厚で賢い方が思追、元気がいい方が景儀です。冒頭で講談師が語る夷陵老祖の話を聞いていた時の反応でも分かる通り、彼らは16年前まだ幼く、現役時代の魏無羨を直接見たことがある世代ではありません。なのでこの二人に関しては素顔を見られても一応問題はないです。

 彼らは魏無羨のことを素直に「親戚に虐待され精神を病んだ青年・莫玄羽」と信じているので、魏無羨もそれに合わせて狂人を演じつつ密かに化け物退治を支援します。

 莫家では怪異を引き寄せる旗(生前の魏無羨が考案)を使って討伐を行おうとしていましたが、不測の事態が発生したため応援を呼びます。合図を見てやってきたのが彼らの師にあたる藍忘機(ラン・ワンジー)です。

 

藍忘機(ラン・ワンジー

藍湛(ラン・ジャン)、含光君(がんこうくん)

 1話の終わりに琴を携えて登場した白装束の寡黙な男性。原作では攻めです。藍宗主の弟であり、生前の魏無羨の知己です。彼らの出会いは3話以降の過去編で判明します。当時から品行方正かつ優秀な仙師として名高く、現在も藍氏の内外から尊敬を集めています。

 莫家で暴れていた剣霊(悪霊の取り憑いた剣)に陰虎符の痕跡があったことから魏無羨の関与を疑い、自分の到着と共に姿を消した莫玄羽を気にします。蘇ったばかりの魏無羨はもちろん剣霊のことは知りませんが、後半部分については藍忘機の直感は当たっています。

 

 ちなみに呼称の種類ですが、姓+字(例・魏無羨、藍忘機)よりも姓+名(例・魏嬰、藍湛)の方が親しい呼び方になるらしいです。夷陵老祖や含光君はいわゆる二つ名です。

 また、日本語で言う〇ちゃん/くんのような更に親しい呼称として「阿〇」が出てきます。過去編で魏無羨が義姉からしょっちゅう「阿羨(アーシェン)」と呼ばれているのがこれです。

 他には過去編の座学のあたりでたまに「苗字+兄」(例・魏兄)というパターンもあり、これは同級生間でよく使われる呼び方で特に兄弟関係にあるわけではないそうです。

 

藍忘機、江澄との再会(2話)

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 旅に出た魏無羨は、かつて藍忘機と共に訪れた大梵山に差し掛かります。その一帯では近頃周辺住民が急死したり正気を失ったりといった異変が続いており、妖怪の類いが魂を食らっているのではないかと考えた複数の世家が集まってきていました。魏無羨は山に入り、金氏の若者・金凌(ジン・リン)が他の世家と揉めているところに遭遇します。金凌に見つかり口論になっていると、その場に生前の魏無羨と深い因縁のある江宗主・江澄(ジャン・チョン)、そして莫家で出会った藍思追や藍景儀たちを率いた藍忘機も現れます。

 二人の登場にその場から離れた魏無羨は通りすがりの仙師たちの会話を耳にし、金凌がかつての義理の姉・江厭離の息子であることを知ります。金凌の両親は既にこの世になく、彼らを死に追いやったことも夷陵老祖の悪行の一つに数えられていました。

 一方、藍思追や金凌ら若い弟子たちは山の祠に祀られた舞天女の像を発見します。その時金凌が不用意に口走った台詞により像が動き出して襲ってきます。騒ぎを目にした魏無羨が事態を収拾するため即席の笛を奏でたところ、本人にも思いがけないことに、かつて魏無羨に付き従っていた「鬼将軍」温寧が出現します。

 温寧により舞天女像は倒せたものの、仙師たちは夷陵老祖の部下である温寧を捕らえようとします。魏無羨は温寧を笛で制御し退かせることに成功しましたが、そうこうするうちに江澄や藍忘機も到着し、夷陵老祖にしか従わないはずの温寧を操ってみせた莫玄羽(=魏無羨)は正体を怪しまれることになります。

 

 

2話登場人物

金凌(ジン・リン)

金如蘭(ジン・ルーラン

 大梵山に怪異の討伐にやってきた金氏の若い仙師。藍思追や藍景儀と同年代です。金氏直系の男子であるため額に赤い点があります。

 父親は先代金宗主(金光善)の嫡男「金子軒(ジン・ズーシュエン)」、母親は先代江宗主(江楓眠)の娘「江厭離(ジャン・イエンリー)」、どちらも故人です。江厭離は魏無羨の義理の姉、江澄の実姉に当たる女性です。

 金氏の後継者として金氏・江氏から大事に育てられたためプライドが高く我儘ですが、根は悪くない少年です。

 魏無羨は大切な義姉の息子とは知らず「母親の顔が見たい」と彼の地雷を真上から踏んだため後で反省していました。

 先代金宗主(金凌から見て祖父)の隠し子で金麟台から追い出された莫玄羽のことを見知っており、仮面をつけた魏無羨を莫玄羽だと認識します。「叔父上が追い出して正解だ」と言い放ちますがこの「叔父上」は父方である金氏、「外叔父上に言いつけてやる」は一緒に来ていた母方の叔父の江澄を指しています。

 

江澄(ジャン・チョン)

江晩吟(ジャン・ワンイン)

 1話冒頭で魏無羨に剣を振り下ろしていた人物です。

 当代の江宗主。生前の魏無羨の義弟で、金凌の母である江厭離の弟。先代の父の跡を継いで宗主を務めています。親のいない金凌の保護者代わりのような存在で、厳しくも大切に教育しています。

 16年前の戦いで魏無羨を討ったとされ、その後も崖下を捜索させたり夷陵老祖由来の術を使う者を片っ端から捕らえたりと並々ならぬ執念を燃やしています。

 2話最後で魏無羨に使ったのは「紫電」という鞭で江澄の固有武器です。生きた人間の身体に悪霊が取り憑いていた(=奪舎)場合、紫電で打つことで悪霊の魂を身体から追い出す能力があります。今回その効果がなかったのは莫玄羽が使った舎身呪が奪舎とは別の仕組みであるためです。

 

温寧(ウェン・ニン)

 夷陵老祖時代の魏無羨に仕えていた「鬼将軍」。魏無羨の笛の音に反応して現れた、鎖を巻かれ黒装束を纏った異形の男です。魏無羨が死者を操る笛を吹いて指示し、温寧が一騎当千で敵を薙ぎ倒すのが当時の戦闘スタイルでした。

 16年前に夷陵老祖と共に死亡したとされ、魏無羨自身も彼の消滅を信じていました。

 

過去編(2話終盤~33話序盤)

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 16年前を回想する魏無羨。当時の彼は将来有望な江氏の弟子で、義姉弟の江厭離・江澄と共に藍氏の座学に参加するため、故郷の蓮花塢を出て藍氏の本拠地・雲深不知処を訪れていました。

 到着早々に藍宗主の弟・藍忘機と一悶着起こす魏無羨ですが、「自分の好敵手が見つかった」と気に入り構い倒すようになります。正反対の二人はぶつかり合いながらもやがて強い友情(以上)で結ばれ、共に正義を貫くことを誓い合います。

 各地で起こる怪事件を追ううちに、彼らは仙門百家を巻き込んだ温氏の陰謀を突き止めます。信じる正義のためそれぞれのやり方で立ち向かう二人ですが、徐々に狂い始めた歯車はやがて悲劇を引き起こします。

 

 

 

過去編登場人物(五大世家関係)

 藍氏の座学の間は他家から来ている生徒も全員白装束になります。例外は温姉弟

 演者の風貌が変わらないので分かりづらいですが、魏無羨以外のキャラは過去編→現在編で16年分歳を重ね、かつての同級生は30代になっています。ただ仙師(つまり登場人物ほとんど)はその霊力により普通の人間よりも長い寿命を持つらしく、年齢については感覚が違いそうなので深く考えないことにしています。

主人公

魏無羨(ウェイ・ウーシェン)

魏嬰(ウェイ・イン)、夷陵老祖(いりょうろうそ)

 過去編開始時点で江氏の一番弟子です。江宗主・江楓眠の義理の息子であり、江氏の義兄で江厭離の義弟です。母親は蔵色散人(ぞうしきさんじん)という女性で、伝説的な仙師・抱山散人(ほうざんさんじん)に師事していました。

 幼い頃に両親を亡くし路頭に迷っていましたが、父親が生前江楓眠に仕えていた縁で養子に迎えられました。江楓眠の子供たちとは実の兄弟同然の関係で、特に江厭離のことは姉として深く慕っています。

 性格は自由奔放、大胆不敵、天真爛漫で好奇心旺盛。更に正義感と反骨精神を持ち合わせており、結果として特に過去編序盤は毎回トラブルに首を突っ込むかトラブルを引き起こすかを繰り返しています。

 仙師としての能力は藍忘機に引けを取らないほど高く、不真面目にも関わらず大抵のことは人並み以上にこなせる天才肌でもあります。武器は随便(ずいびん)という剣ですが、ある時点から陳情(ちんじょう)という名の笛を使用するようになります。

 義姉弟と共に向かった藍氏の座学で藍忘機と出会い、紆余曲折を経て無二の親友(以上)となります。

 私服だと基本的に黒+赤の衣装です。

 

藍忘機(ラン・ワンジー

藍湛(ラン・ジャン)、含光君(がんこうくん)

 藍宗主・藍曦臣の弟で、前宗主の次男です。無口無表情でストイックな性格。常に白一色か白+淡い水色の衣装です。整いすぎて近寄り難い部類の美形で、仏頂面がそれに拍車をかけています。

 規律正しい優等生で仙師として非常に優秀です。過去編開始時点で魏無羨と同年代の若者ですが、既に藍曦臣と共に「藍氏双璧」と呼ばれ名を馳せており、宗主である兄の仕事を補佐しています。魏無羨たちが不知処にやってきた頃、藍氏では弟子たちが次々と原因不明の呪いに倒れる事件が続いており、藍忘機はその調査を行っていました。その傍ら叔父である藍啓仁の講義にも参加し、なし崩し的に問題児魏無羨の監督役を任されます。

 当初は一方的に懐いてくる魏無羨にも素っ気なかったのですが、様々な出来事を通して絆を深めていきます。初見で不安になるほどの口数の少なさ自体は後半になってもあまり変わらないものの、魏無羨の人となりを知り共に死地を乗り越えるうちに彼への視線がどんどん雄弁になっていきます。

 剣の名前は避塵(ひじん)。忘機琴(ぼうききん)という琴も使い、藍氏伝統の弦殺術(衝撃波)を得意としています。藍氏の琴は他にも色々な使い道があり、作中では死者の霊に問いかけて情報収集を行ったり人の精神を鎮めたりと活躍しています。

 魏無羨がどちらかというとテクニカルな戦い方をするのに対し、剣での戦闘を見ている限りでは彼は意外とパワー型なところがあります。

 

 

雲夢江氏

江澄(ジャン・チョン)

江晚吟(ジャン・ワンイン)

 江宗主・江楓眠の嫡男で江厭離の弟、魏無羨の義弟です。あまり融通が効かず皮肉屋でよく魏無羨に小言を言っています。眉間の皺が目印。

 姉を大切に思っており、魏無羨に対しても複雑な思いはあるものの友情を抱いています。

 1〜2話では魏無羨、藍忘機との関係が相当に険悪になっていますが過去編開始時点ではまだその兆候はありません。魏無羨との関係が表立って拗れ始めるのはある事件が発端ですが、それは冒頭の崖の場面に至る悲劇の前段でしかありませんでした。

 

 以下江澄語り 

 仮にも江宗主の養子という立場でありながら自由すぎる魏無羨に胃を痛める描写が多いです。魏無羨本人の身も案じ(素直になれないのでおくびにも出していませんが)なんとかフォローしようとしているのに基本的に聞き流されています。そうこうするうち素で能力の高い魏無羨はなんだかんだ功績を引っさげてトラブルから生還し評価され、なんとなく江澄だけ割を食ったような雰囲気で幕、という流れが本編以前にも日常的にあったんだろうことを容易に想像させます。

 これだけでもかなり気の毒な上に、江澄から見て魏無羨は兄弟子とはいえ父親の従者の息子です。なのに実力・父親からの評価共にどう言い繕っても魏無羨が勝っているし、領民や門下生たちからの人気も多分昔から魏無羨の方が高かったのかな…と蓮花塢での短い描写から感じてしまいます。極めつけに父親の江宗主が江澄の目の前で魏無羨を「江氏の家訓を体現している」と褒めるに至っては江澄の立つ瀬がありません。

 更に江澄の母親(宗主の妻)の虞紫鳶が夫に可愛がられている魏無羨に辛く当たり、江澄に対しては「臣下の子に負けてなぜ平気でいるのか」と責めるのですが追い討ちでしかありません。

 虞夫人が魏無羨を邪険にする背景には、魏無羨が江楓眠の子ではないかと以前から一部で囁かれていたことがあります。出生については根も葉もない噂ですがどうも江楓眠が魏無羨の母親に好意を抱いていたのはあながち間違いでもないらしく、プライドの高い夫人としては穏やかではない話です。

 ちなみに魏無羨の母親の蔵色散人ですが、魏無羨の性格は彼女譲りのようです。江澄もどう見ても母親似なので虞夫人は魏無羨に敵わない江澄が自分と蔵色散人を見るようで余計に我慢ならなかったのではないでしょうか。

 とはいえもちろん魏無羨に江澄の立場を脅かすつもりはさらさらありません。俺の父親が江おじさんにしたように俺も将来宗主となったお前に仕えるつもりだと無邪気に宣言しています。だからこそ江澄は魏無羨を嫌うこともできずただただ忸怩たる思いでいるのですが、そのあたりの機微を知らない夫人には理解してもらえないのです。

 以上のような事情がありながら家族として魏無羨に向ける愛情は本物で、藍氏が藍氏双璧なら俺たちは双傑だと何度となく言い合っています。しかし「魏無羨と並び立つ存在」という立ち位置まで後から現れた藍忘機に次第に奪われてしまいます。

 恐ろしいことにこれらは全て前提でしかなく、江澄の魏無羨への感情は本編を通して更に複雑に屈折していきます。是非そのあたりにも注目して頂きたいです。

 

江厭離(ジャン・イエンリー)

 江宗主・江楓眠の娘で江澄の実姉、魏無羨の義理の姉です。金氏の嫡男である金子軒と婚約しています。私服は主に薄い紫や緑の衣装。優しく包容力があり、弟たちと行動を共にしながら見守っていることが多いです。

 魏無羨を阿羨(アーシェン)、江澄を阿澄(アーチョン)と呼びます。彼女自身は両親から阿離(アーリー)と呼ばれます。

 金子軒に対しては決められた婚約者というだけでなく好意を持っています。金子軒も同様なのですが、現時点でこの二人の関係は金子軒のプライドの高さが本当にダメな方向に働いていて、江厭離は何度となく心を痛めています。

 

江楓眠(ジャン・フォンミエン)

 16年前の時点で江宗主であり、江澄と江厭離の父親、魏無羨の養父です。紫基調の衣装を着た中年男性。魏無羨は「江おじさん」と呼んで懐いています。

 過去編開始直後は登場しませんが、藍氏の座学期間中に起きたある一件に対処するため雲深不知処を訪れます。藍兄弟の叔父・藍啓仁と年代が近く紛らわしいですが髭と鉢巻がないので見分けられます。

 前述したように魏無羨の亡父は生前江楓眠の臣下でした。魏無羨にとっては両親を亡くし天涯孤独となったところを引き取ってくれた大恩ある人物です。江楓眠も魏無羨を実子のように可愛がり能力を認めています。

 魏無羨の母親・蔵色散人のことも生前から知っていたようです。

 

虞紫鳶(ユー・ズーユエン)

虞夫人、三娘

 江楓眠の妻、江楓眠と江澄姉弟の母親。衣装は主に紫+緑で気の強い雰囲気の女性です。彼女も仙師であり武器は紫電という鞭です。2話の江澄はこれを母親から受け継いで使用しています。

 夫の江楓眠は江澄たちと魏無羨を分け隔てなく扱っていますが、彼女の中では明確に実子>養子です。特に嫡男である江澄が昔から仙師として魏無羨に敵わないことを歯痒く思っている様子です。

 

 

姑蘇藍氏

藍曦臣(ラン・シーチェン)

藍渙(ラン・ホワン)、沢蕪君(たくぶくん)

 藍忘機の兄で、亡父の跡を継いで藍宗主を務めています。藍忘機と共に藍氏双璧として知られます。藍氏の偉い人二人のうち若い方。衣装は藍忘機より濃い青系が多いです。

 弟とは違って柔和で優しい雰囲気の人です。善良かつ公正な人柄のため彼を慕う人は多く、揉め事が発生するとよく仲裁役を担っています。兄弟仲は良く、傍からは何を考えているか分からない藍忘機の良き理解者でもあります。

 剣の名前は朔月(さくげつ)、他に裂氷(れっぴょう)という縦笛を使います。

 

藍啓仁(ラン・チーレン)

 前宗主(藍兄弟の父)の弟、つまり藍兄弟の叔父です。藍氏の偉い人二人のうち年配の方、仙人っぽい髭で水色の衣装です。過去編では座学の先生として登場し、家規を破るわ授業は上の空だわの魏無羨に毎回雷を落としています。年代と言動からこの人が藍氏の宗主かな?と勘違いしがち(私調べ)ですがそうではないので注意です。江宗主と違い髭があるのが藍啓仁です。

 とある事情から早々に父母を失った藍兄弟に対し、親代わりとなって厳しく教育を施してきました。

 魏無羨の母親・蔵色散人を知る一人であり、彼女も息子同様の奔放さで藍啓仁の頭痛の種となっていたようです。

 

蘇渉(スー・ショー)

 藍氏の弟子の一人として時折出てくる男性です。内弟子ではなく外弟子なので抹額をしていません。

 外見・活躍共に目立たないので私が彼を認識したのは11話あたりです(恐らく初出は5話)。「藍氏の外弟子」の肩書きで出てくる名ありキャラは他にいないのでそこで見分けられます。しばらく姿を消していた後にひょっこり再登場します。無謀にも藍忘機に対抗意識を持っています。

 

 

蘭陵金氏

金子軒(ジン・ズーシュエン)

 金宗主・金光善の嫡男で、江厭離の婚約者でもあります。金氏直系の男子に共通する額の赤点、金色で豪華な衣装が特徴です。魏無羨は孔雀男と渾名しています。

 過去編では金氏の弟子を大勢引き連れて座学に参加しており、雲深不知処への道中の宿で偶然魏無羨たちと出くわします。

 悪い人ではないのですが次期宗主として誇り高く、また素直になれないお坊ちゃん気質で婚約者である江厭離への対応を毎回間違えています。お姉ちゃん大好きな魏無羨は当然気に食わず何かと険悪になります。

 

金光善(ジン・グアンシャン)

 16年前時点の金宗主。金子軒、孟瑶、莫玄羽の父親です。額に赤点のある裕福そうな中年男性で、座学の途中で登場します。

 女好きで隠し子が多く、妻以外に産ませた彼らを認知せずに冷遇しています。孟瑶や莫玄羽がそれにあたります。

 財力と政治力があり、五大世家を巻き込んだ動乱の中でも老獪に立ち回っています。

 

金子勲(ジン・ズーシュン)

 過去編の途中から出てくる金子軒の従兄弟です。名前が似ているので注意。座学にはいなかった気がします。額の点と金基調の衣装は同じですが、金子軒と比べて分かりやすく居丈高に振舞っています。

 金子軒の場合その面倒なプライドの高さは嫡男としての誇りや責任感の裏返しと言えなくもないですが、彼にはそういうフォローが見当たりません。魏無羨を敵視していますが、歯牙にもかけずあしらわれています。

 

綿綿(ミエンミエン)

 本名は羅青羊(ルオ・チンヤン)という女性です。金氏の血縁ではありませんが弟子で、座学で金子軒一行に交じっています。座学に来ている金氏一門で名ありの女性はほぼ彼女のみです。

 過去編開始直後、雲深不知処への道中で宿を借り切った金氏一行に対し部屋を使わせてくれるよう魏無羨が交渉しますが、その時の相手が綿綿です。座学終了後も何度か登場します。

 

 座学での金子軒と江厭離です。 

 

清河聶氏

聶懐桑(ニエ・ホワイサン)

 聶宗主・聶明玦の弟。魏無羨たちと同様座学に参加するため、聶宗主の部下である孟瑶に付き添われて来ています。初日の拝礼中に小鳥を隠し持っていた青年です。比較的背が低く、のほほんとした雰囲気とよく持ち歩いている扇が目印です。

 聶氏は飾り気がなく武骨な家柄で宗主の聶明玦も家風を体現したような人物ですが、その弟である聶懐桑は対照的に柔弱で風流を好む性格です。正反対の性格ながらも兄弟仲は良好です。

 魏無羨にくっついて遊んでいたり、魏無羨や藍忘機が戦う脇でおろおろしていたりする印象が強いです。藍氏の座学に温氏一行が乗り込んできた際、皆が殺気立つ中彼だけはしっかり孟瑶の後ろに隠れています。

 

聶明玦(ニエ・ミンジュエ)

赤鋒尊(せきほうそん)

 16年前の時点の聶宗主。聶懐桑の兄です。口髭があり、聶氏らしい緑~灰色の落ち着いた色合いの衣装をよく着ています。聶氏の本拠地・不浄世で登場します。

 世間には赤鋒尊として名を知られています。質実剛健で曲がったことを嫌い、激しい気性の持ち主でもあります。武器は覇下(はか)という刀ですが、代々の聶宗主の刀には刀霊という怨念が宿り持ち主が死ぬと暴走すると言われています。

 金氏から息子と認められず放逐された孟瑶を部下として迎えています。藍忘機の兄・藍曦臣とは友人同士のようです。

 

孟瑶(モン・ヤオ)

金光瑶(ジン・グアンヤオ)、斂芳尊(れんほうそん)

 金宗主・金光善の隠し子で、現在は聶宗主・聶明玦に仕えています。愛想が良く慇懃な青年です。座学の初日に聶懐桑の後ろに控えていますが、彼は生徒としてではなく聶懐桑の付き添いで来ており、従って藍氏の制服の白装束ではありません。拝礼で聶氏からの贈り物を献上すると雲深不知処を去っていきます。

 父親の金正善に名乗り出たものの認知されず、金氏の本拠地・金鱗台を追われたため聶氏の門下に入ります。頭脳明晰であるにも関わらず出自のために周囲から軽んじられる場面が多々あり、不遇な身の上を気遣ってくれた藍曦臣を敬愛するようになります。

 色々な場所に顔を出す上に出世魚のように呼ばれ方が変わるので注意が必要です。

 

 左が弟の聶懐桑、右が宗主で兄の聶明玦です。 

 

岐山温氏

温若寒(ウェン・ルオハン)

 温宗主。野心家で冷酷、分かりやすく悪の親玉です。顔色が悪く物騒な雰囲気の初老の男性で、基本的に本拠地・不夜天(あまりにも内装が邪悪)の薄暗い城内にて陰謀を巡らせています。

 過去編開始時点で温氏は最大派閥であり彼自身も仙督(仙師全体を束ねる立場)なのですが、現状に満足することなく更なる勢力拡大を狙っています。他の世家と共存共栄しようという発想は皆無で、逆らう者は殺してしまえの精神です。

 遠い昔に五大世家によって各地に封じられたとされる「陰鉄」※という宝具を手に入れようとしています。陰鉄探索にあたり、薛洋という客卿と取引をしている様子です。

 ※傀儡(ゾンビのようなもの)を操ることができる危険物。大昔これを使って悪事を働こうとした人物がおり(名前は薛重亥(シュエ・チョンハイ)ですが特に覚えなくても問題ないです)五大世家によって討伐されています。

 作中のとある展開で分かる通り「死者(傀儡)を操る」というのは特に乱戦でめちゃくちゃにアドバンテージを発揮する強力な攻撃手段なのですが、正道に反するとされることや心身への副作用、暴走の危険から使用者は異端視されます。しかし誰もが本音では戦力として魅力的だし欲しいと思っているのです。

 

温情(ウェン・チン)

 温氏分家の出身で温寧の姉です。赤と黒の衣装を纏った冷静な女性で、不穏な動きをする温宗主・温若寒からとある役割を担わされ、弟共々藍氏の座学に送られてきます。他の生徒と違い、温情と温寧は座学の期間中も白装束ではなく赤黒の衣装を通しているので分かりやすいです。

 聡明で優れた医師でもあり、飛び道具として針を扱います。たった一人の弟である温寧を深く愛しています。

 温若寒には自分と弟を養育してもらった恩があり、また身体の弱い弟を人質に取られているも同然なのでやむを得ず従っていますが、彼女としては不本意です。

 不自由な立場ながら本家の目を盗んで時折魏無羨たちを助けてくれます。

 

温寧(ウェン・ニン)

鬼将軍(おにしょうぐん)

 温氏分家の出身で温情の弟。身体が弱く、内気で心優しい青年です。弓が得意。温情と同じく赤黒の衣装を着ています。

 姉と共に藍氏の座学に送られますが虚弱なため講義に参加できず、他の生徒とはあまり交わらずに過ごしていました。偶然魏無羨と出会って親しくなり、以降友人として助け合うようになります。

 彼もまた温氏本家のやり方には賛同せず争いを望んでいませんが、本人の思いをよそに温氏の一員である彼を取り巻く状況は剣呑さを増していきます。

 2話で登場した異形の「鬼将軍」と同一人物です。

 

温晁(ウェン・チャオ)

 温宗主・温若寒の次男。座学初日に温情と温寧の姉弟を率いて雲深不知処に乗り込み、傍若無人ぶりを遺憾なく発揮した人物です。衣装は温氏の赤黒、常に尊大な態度なので彼も分かりやすいです。

 ハリポタならマルフォイ、ゲーム・オブ・スローンズならジョフリー、絵に描いたような家の権勢を笠に着た横暴息子です。ちなみに彼は次男ですが、長男である温旭(ウェン・シュー)の方は参戦しているものの顔を思い出せないレベルで影が薄いので、彼の上にもう一人息子がいるとだけ覚えておけば問題ないです。

 他家の子弟を甚振るのが大好きで、小物ながら権力があるのでかなり洒落にならない嫌がらせを行います。基本的に魏無羨はこの手の偉そうな小物に百発百中で目を付けられています。

 ダメな貴族を地で行くのでファミリービジネスに愛人を連れ回し、強面の屈強な部下を従えています。

 

温逐流(ウェン・ジューリウ)

化丹手(かたんしゅ)

 温宗主の次男・温晁の忠実な部下兼護衛。無愛想なSP顔です。戦闘能力が高く、相手の金丹(修行で練られた霊力の源)を半永久的に失わせることができる能力を持っており非常に厄介です。

 ちなみに本名は趙逐流(ジャオ・ジューリウ)らしく、温氏の血縁というわけではないようです。

 

王霊嬌(ワン・リンジャオ)

 温宗主の次男・温晁の愛人。赤~紫の衣装の派手な女性です。元は温晁の妻の侍女でしたが若君の寵愛を受けて完全に増長しており高飛車です。彼女もいかにもそんな感じの言動しかしないので識別は簡単です。

 霊力が低く剣を扱えないため、代わりに使用にあまり霊力を要求されない焼き鏝を持ち歩いています。

 

阿苑(アーユエン)

 温情や温寧の親戚の幼児。本名は温苑(ウェン・ユエン)です。色々な成り行きにより子育てBLみたいな展開があります。

 

 温情と温寧の姉弟です。 

 

ややネタバレ

 過去編の途中、とある一件を機に「聶宗主・聶明玦」「藍宗主・藍曦臣」「金宗主から正式に息子として認められた金光瑶(孟瑶)」の3人が義兄弟の契りを交わし、「三尊」と呼ばれるようになるイベントが発生します。年齢順なのかどうなのか聶明玦>藍曦臣>金光瑶の順で兄>弟のようです。以降彼らは互いを義兄・義弟と呼ぶようになり、更に聶明玦の弟である聶懐桑→藍曦臣・金光瑶の呼称も義兄上になります。

 (同様に藍忘機から見ても聶明玦と金光瑶は義兄になったはずですが、口数が少ない上に物語が進むにつれて魏無羨のことしか話さなくなるので彼の義兄呼びを聞いた記憶がありません)

 

過去編登場人物(五大世家以外)

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暁星塵(シャオ・シンチェン)

道長

 魏無羨たちが旅の途中で出会う優れた仙師。白装束で穏やかな物腰です。慈悲深く高潔な人柄で、仙師として強い使命感を持っています。

 魏無羨の母は蔵色散人という仙師でしたが、彼女の師は生きていれば数百歳になる抱山散人という女性で、現在は山に隠遁しています。暁星塵はその抱山散人の弟子です。

 抱山散人は自らの弟子に山を下りることを禁じており、下山した場合は二度と戻ってはならないと定めています。魏無羨の母や暁星塵は山を下りて下界で生きることを選んだ例外的な存在です。

 下山後の暁星塵は血筋に囚われないという考えの元、親友である宋嵐と二人で世家とは距離を取って活動しています。剣の名前は霜華(そうか)です。

 衣装は真っ白ですが藍氏は無関係です。遠目で藍忘機と紛らわしいので注意。

 

宋嵐(ソン・ラン)

 暁星塵の無二の友。共に各地の怪異を討伐して回っており、魏無羨たちが彼らと初めて出会った時も一緒にいます。剣の名前は払雪(ふっせつ)です。

 

薛洋(シュエ・ヤン)

薛成美(シュエ・チョンメイ)

 過去編での登場時は温氏の客卿の立場にいます。黒基調の衣装を纏い、だいたいどんな状況でも不敵に笑っている印象です。戦闘能力が高く、残酷で破滅的な性格です。

 温氏の陰謀に加担して魏無羨たちと敵対しますが、独自の行動原理で動くので温若寒も制御しきれない厄介な存在です。剣の名前は降災(こうさい)です。

 暁星塵と関わったことがあり、以降思うところがあったのか目を付けています。

 

阿箐(アージン)

 盲目を装って物乞いで生計を立てる少女。偶然暁星塵と出会い、助けてもらったことから彼に懐いて行動を共にするようになります。頭の回転が早く、危険な人物はそうと察して警戒します。

 ドラマ後半の36~39話、義城という街を舞台に暁星塵、宋嵐、薛洋の三者が関わる一連の出来事を描く「義城編」の狂言回しのような存在です。

 

姚(ヤオ)宗主・欧陽(オウヤン)宗主

 どちらも五大世家ではない仙門の宗主です。俗っぽい感じの中年男性二人。話の規模が大きくなり、世家が一堂に会するようになると登場します。手のひら返しが得意で無責任なため、基本的にこの二人が出張ると事態が悪化します。

 欧陽宗主の息子は欧陽子真(オウヤン・ズージェン)という名前で、藍思追たちと同年代の少年です。現在編にて途中からよく一緒に出てくるようになります。父親と違い、息子はそれなりに気骨があるようです。

 

 暁星塵とは過去編で出会います。 

 

再び現在(33話~)

 長い追憶から覚めた魏無羨は雲深不知処の一室に匿われていました。魏無羨の復活と時を同じくして莫家に放たれた強力な剣霊の正体を突き止めるため、魏無羨と藍忘機の二人は再び昔のように各地を巡ることになります。剣霊の謎はやがて16年前の事件の真相に繋がり、そして旅の過程で魏無羨は、一度自分を失った藍忘機の思いの深さを知ります。

 

 

最後に

 以上、ドラマ『陳情令』の紹介でした。藍忘機×魏無羨の関係を筆頭にまだまだ書き足りないことはありますが、それについては機会があれば稿を改めたいと思います。

 個人的に注目してほしい点はこの5つです。

  1. 3話の魏無羨と綿綿の会話(これで彼の人となりが分かるのですがとにかくかわいい)
  2. 藍忘機の目の演技(視線の熱で語る分量がものすごい)
  3. 江澄の魏無羨への感情の推移(最後の最後にやられたので見届けてほしい)
  4. 36~39話の義城編(ここだけで映画1本成立しそうな完成度)
  5. 誰も予想できないタイミングで始まる子育てBL(本当にこんな時にやる??ってところで来ます)

 

 ここまで読んで頂きありがとうございます。陳情令是非観てください。